コガレル ~恋する遺伝子~


 運ばれたのはバスルーム。
 洗面化粧台へ座った姿勢で降ろされた。
 アメニティがいくつか、私の身体に押されて倒れたのが分かった。
 大理石の冷たさが、スカートを通して伝わってくる。

「見て、」

 圭さんは背中の後ろに数歩下がると、湿気で曇るガラス扉を開けた。
 湯気がこっちに逃げ出すのを眺めてたら、そのうち奥にバスタブが見えた。
 3、4人は入られそうな大きさの白いバスタブには、浮かぶバラの花びら。

「こういうの好きでしょ、誰かさん」

 私の前に戻った圭さんが屈んで、またキスした。
 今度は深くて長いキスだった。

 キスの間に、指が私のブラウスのボタンにかけられた。
 私はその手を握って止めると、身体を引いた。

「恥ずかしい…」

「前にも見たことあるし」

 私に余裕があると言った圭さんの方が、よっぽど余裕がある。

「これも…事故ですか?」

「これは、愛ある確信犯」

 そう言って圭さんは、私の服を脱がせるのと同時に自分の服も脱いだ。
 その途中には何度もキスをした。

 二人とも一糸纏わぬ身体。
 恥ずかしくて目を伏せたら色んなものが視界に入る。
 だから圭さんの顔を見上げた。
 整った顔に見つめ返されて、余計に恥ずかしくなるだけだった。

「超大型犬と風呂に入ると思えば?」

「そんなの無理…」

 ついさっきの仕返しをされた。
 圭さんは可笑しそうに笑うと余裕の顔で、私の手を引いた。
 二人でシャワーを浴びて、バラの湯に身を沈めた。
 言葉匠に私に触れようとする圭さん。

「今日は残念だけど、長湯できないから」

 そんな宣言通り、折角のバラの湯は堪能できなかった。


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