コガレル ~恋する遺伝子~


 圭さんに車でアパートに一度寄ってもらってから、一緒に出社した。
 編集部には夢ちゃんと冬馬君が揃ってた。
 黒幕の編集長は外出先から遅れての出社予定。
 今日は特別に冬馬君が手配したメークさんが一人来てた。
 人物撮影の時に、何度か私も面識があった。


「お久しぶりです。よろしくお願いします」

「あら、弥生ちゃん。なんか雰囲気変わった?」

「え、そうですか?」

 このメークさんは嶋さん。
 年齢不詳の一応男性。
 一応というのは、心も言葉遣いも気遣いもお姉さんだったから。
 ちなみに冬馬君が大のお気に入りらしい。
 仕事は一流で拠点は福岡なのに、冬馬君にお願いされると
「飛んで来ちゃう」そうだ。


 それぞれが作業に取り掛かった。
 もちろんここにはスタジオなんてないから、撮影に使うのは会議室。
 セッティングの間、圭さんは向こうで大人しくメークを施されてる。

 私は冬馬君と邪魔な長テーブルやイスを脇にどけて、撮影機材をセットする。
 クロマキーバックをポールに取り付けるのを手伝ってたら、冬馬君が小声で話しかけてきた。

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