コガレル ~恋する遺伝子~


 撮影が始まるとそれぞれの仕事がプロだった。

 嶋さんのメークも髪のセットも完璧。
 圭さんの隙のない格好良さが引き出されてた。
 人数分のコーヒーを手に下げて帰ってきた夢ちゃんも、一目見て思わずため息が漏れる程に。

 圭さんはシャッターが下りる度に少し顔や身体の角度を変えた。
 どのショットも多分目の覚めるような整った顔で撮れてるはず。
 私がカメラマンなら、どの一枚を使うかきっと決められない。

 くまたんの表紙なんて、ちょっともったいないかも…なんて不謹慎なことを考えた。

「弥生さん、ライトもう少し下に向けて」

 冬馬君に指示されて、ハッとした。

「真田さん、もう少し笑顔を」

 冬馬君も真剣な眼差しでレンズを向けてるのに、
「じゃ、君が笑わせてよ」圭さんはそんな言葉を返した。

「あら、あら」

 後ろで撮影を見守ってた嶋さんが楽しそうに呟いた。

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