コガレル ~恋する遺伝子~


 でもそんな不安は杞憂に終わった。
 圭さんはその後の質問は全て真摯に答えてくれた。

「ベネチア国際映画祭では惜しくも受賞とはなりませんでしたが、上映された後の現地の反応はどうでしたか?」

「監督や脚本が良かったのでしょうが、悩み抜いた演技も少し褒めて貰えました。
正解はどこにもないと思いつつも、間違いでもなかったのかと感じました」

 普段私には明かさない、仕事に対する情熱が見えた気がした。
 同時に圭さんが手の届かない場所へ行ってしまうような、そんな淋しさが胸に宿った。


「イタリアを観光できましたか?」

「島をほんの少し。バカンスで恋人とでも行けたら最高なんでしょう。
あ、でも海は天草も負けず劣らず綺麗でしたよ。昨日、行きました」

 圭さんが意味深なアイコンタクトをしてくるから、ドキッとした。

「そ、そうなんですか…
熊本へはまた来たいと思いますか?」

「はい。
時間の許す限り来ます、何度でも」


 インタビューは時間にして30分くらい。
 写真を撮り終えた冬馬君が途中で退室して、二人きりになってたことにも気づかなかった。
 多分全部は記事に載り切らない。

 それでも今聞きたいことを圭さんにたくさん質問した。
 圭さんもはぐらかすことなく、きちんと答えてくれた。


 夢中だった。
 私は圭さんに夢中だった。



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