コガレル ~恋する遺伝子~
昨日は外からのぞき見た玄関。
今はそのドアの内側にいる。
予想通り玄関は、三階までの吹き抜けだった。
はめ込みのガラスから眩しい朝日が射し込んだ。
脱いだ記憶のない私のパンプスも、きちんと並んで照らされてる。
それにしても…何で専務は私の名前を知ってたんだろう?
靴ベラを元の位置に戻すと、仕方なくリビングに戻ることにした。
圭さんがソファに腰かけてスマホを操作してる。
なんて言うか…入りにくい。
入り口の辺りで所在なげに立ってると、
「あんた、いくつ?」そう聞かれた。
「24で…」
「ハァ?」
です、と最後まで言い切らないうちに答えが遮られた。
信じられないというニュアンスと同時に、呆れた表情を浮かべられた。
「兄貴より1コ、下じゃん!
ヤる時はヤるね!親父も」
リビングの奥から、准君が会話に加わった。
手にはグラスに注いだ牛乳を持ってる。
さっきも専務がカップを置きに行ったから、あそこがキッチンで間違いなさそう。
准君は圭さんの隣に座ると、「ねぇ?」と同意を求めてから、牛乳を飲み干した。
圭さんは無視を決め込んだけど。
「なんか面白そうだけど、俺も行くわ」
空のグラスをテーブルに置いた准君は、立ち上がってリュックを肩にかけた。