コガレル ~恋する遺伝子~


 夕方仕事を終えたら、圭さんは約束通り車で待っててくれた。
 私が乗り込むと、夕食にしようという話になった。

「いいお店があります」

 前に取材した店に案内することにした。
 ホテルの近くだから、車を停めて歩いて行ける。
 そこはいわゆる居酒屋で奥に個室とまではいかないまでも、仕切られた座敷席のある店。
 運転も人目も気にせずに圭さんもゆっくり飲めるはず。

 引き戸を開けると、店員に威勢よく迎え入れられた。

「あれ、葉山さんか、この間のお連れさんとは別の人だね」

 席に通される時、カウンターから大将が余計な一声をかけてくれた。

「しゅ、取材で、あの人はカメラマンじゃないですか!」

「あはは、そうだっけ?」

 席に座ると圭さんは、煙たい顔で私を見てる。

「圭さん、馬刺し、ここは馬刺しが美味しいんです、嫌いじゃないですか? 馬刺し、食べましょう?」

「ナニ、慌ててんだか」

「あ、慌ててません…よ…」

 ただの勘違いで機嫌を損ねて欲しくなかった。
 だって明日にはもう、圭さんは帰ってしまうから…

「仲いいね、カメラマンさんと」

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