コガレル ~恋する遺伝子~

「これを左にすれば良いかと…」

 圭さんがため息を一つこぼしてから言った。

「これはただのペアリング。
結婚指輪は、自分で好みなの選びたいでしょ?」

 そう言われて私は指輪をもう一度よく眺めた。
 これだって私にはもったいないくらい素敵。
 それに、自分の身につける指輪にもアクセサリーにもそれ程興味はなかった。


「圭さんのそばにいられるなら、指輪なんてどうでもいい…」

 裸の胸に頬を埋めた。
 伝わる鼓動と圭さんのフレグランスではない香りを感じる。

 もう一度このまま…眠れ…そう……

 それなのに身体は半転して、背中をシーツに押さえつけられた。

「誘っといて、なに勝手に寝ようとしてんの?」
「誘ってな…」

 唇を塞がれて言葉は奪われた。
 舌と唇で深く苦しくされて、視界がにじんだ。

 わざとだ。
 圭さんはいつも私の呼吸を苦しくして、涙を誘う。
 首を振って息継ぎを確保すると、せめてもって…
「暗くして…」そうお願いしたのに。

「綺麗…」

 私の全てを光の下に晒された。

 チェックアウトのギリギリまで、明るい部屋のベッドから降りることは許されなかった。

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