コガレル ~恋する遺伝子~

 ホテルを出た後、二人で熊本城の辺りを散策して、遅めの昼食を食べた。

 飛行機の時間が迫りつつある空港までの車内。
 慣れない指輪を無意識に触ってたみたい。

「指輪、外すの禁止だから」

 運転しながらの圭さんにそう言われた。

「そんで、ナンパされそうになったら、左につけて」

 圭さんらしい発想で笑ってしまう。

「心配いりませんよ、私そんなにモテませんから」

 憐れな女を見るように、チラッと視線を向けられた。

「鍵、早くね」

 鍵…
 昨日の朝に寄った、オートロックなんてない私の安アパート。
 ドアに一つだけ付いてる頼りない鍵を咎められた。
 無謀な引越し要望をチラつかせるから、鍵をもう一つ増やす約束で渋々納得してもらった。

「帰ったら不動産屋に電話してみます」

 ここでも渋い表情を見せたけど、蒸し返されることはなかった。

「あと、」

「まだあるんですか、」たまらず苦笑いが漏れた。

「カメラマンと二人で出かけるの禁止」

「仕事、できませんよ…」

 圭さんは前を見たまま、フッと笑った。

「冗談。言ってみただけ」

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