コガレル ~恋する遺伝子~


「迎えに来てくれて、嬉しかった」

「じゃ、一緒に帰ろうよ?」

 私は首を横に振った。
 圭さんはフッて笑うと、
「言ってみただけ」そう言って立ち上がった。

 もうすぐ搭乗が始まる。
 搭乗口の入り口まで手を繋いで歩いた。

「仕事、無理し過ぎないでください」

「ハイハイ」

「冬休みにお屋敷に泊まりに行ってもいいですか?」

「ハァ? なんで? 俺のマンションでいいじゃん」

「あそこが、好きなんです」

 圭さんに腕を引かれて次の瞬間、私は胸の中に埋まってた。

「なんでもいいよ、弥生がいてくれるなら…もう、なんでもいい」

 圭さん…
 私もピッタリと圭さんに貼りついた。
 圭さんの鼓動と香りを頬と鼻に覚えさせたかった。

 圭さんは私の耳元で最後に囁いた。

「冬休みまで、泣くの禁止」

 離れると笑って搭乗口の向こうへ消えた。
 帰ったら不動産屋に電話して、眠ろう…
 今日は寂しいけど…

 待っててくれる人がいるから頑張れる。
 明日からはきっと大丈夫。


 搭乗口を背にすると私も歩き出した。


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