コガレル ~恋する遺伝子~

 気分転換に例の涌井の封筒をバッグから取り出した。
 ガムテを剥がして開けた袋を逆さまにする。

 ストンと膝の上に乗った箱。
 薄さが売り文句のソレを瞬時に理解して、封筒に戻した。
 誰かに見られなかったかと、左右、前後を確認する。

 ファーストクラスの余裕のある座席。
 それぞれ個人を満喫していて、挙動不審な俺のことには皆無関心で助かった。
 それにしても、

 これ持ち歩くのかよ…

 剥がした時点でガムテの粘着はなくなってしまった。
 三度、いや四回、口を折り返してバッグに突っ込む。
 涌井への仕返しは、後でゆっくり考えることにした。

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