コガレル ~恋する遺伝子~
編集長にさらに奥の部屋に通されて、用件を聞かれた。
用件と言われても、あんたに用はない。
とはいえ平日の昼間、職場にアポなしで訪れたんだから、そう言う訳にもいかないだろう。
「今度、熊本を舞台にした時代劇をやるにあたって、知り合いの葉山さんに案内してもらおうかと。観光も兼ねて」
「葉山とお知り合いですか。へぇ、時代劇を。もしかして大河ですか?」
大河も何もそんな話、嘘だし。
編集長に夢と呼ばれたさっきの女子が、気を利かせてコーヒーをテイクアウトで買ってきてくれた。
それに口をつけながら、曖昧に適当に話を受け流した。
編集長は話題が広がらないと見るや、観光と食事をするなら、とそこは流石の提案を始めた。
ただ途中からそんな話は耳に入らなかった。
なぜかって、弥生が編集部に帰ってきたから。