コガレル ~恋する遺伝子~


「ただいま、戻りました」

 久し振りに聞いた声。
 でも帰ってきたのは弥生だけじゃない。
 未だに絶賛あたふた中の女子を、からかう男の声も聞こえてきた。

 この部屋は透明のアクリル壁面で二方を囲まれている。
 残りの二方は壁、その内一方に胸の高さの窓があった。
 アクリル部分はブラインドで見え隠れする仕様。

 今ブラインドは下りてはいても、明かり取りの角度がついてる。
 向こうが見える。

 弥生が席に着いたのが見えた。
 少し痩せたみたいだ…
 ちゃんと食ってるのか?

 目の前の俺に無反応なのを見ると、あっちからこの中は見えないらしい。
 向かいの席には、一緒に帰ってきた男だろう、そいつが弥生と見つめ合って笑った。

 楽しそうにやってる弥生に安堵すると共に、胸をチクリと刺すものがあった。
 相変わらず話しかけてくる編集長の声にまぎれて、俺がいることが告げられたのを聞いた。

 こっちに向かって来る弥生。
 その背後には男の姿。

「ホントだ、真田圭だ」

 そう声を漏らした男は、ピッタリと弥生に張り付いてた。
 少なくとも、ここからはそう見えた。

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