コガレル ~恋する遺伝子~
「随分にぎやかなんですね」
弥生とはなかなか目が合わない。
編集長が俺の案内を弥生に振ると、なぜか夢とやらに俺を押しつけようとした。
しかもだ、
「編集長、今日は仕事が終わった後、約束があるんです、ね、冬馬君?」
って、ハァ?
何言っちゃってんの?
それに振り返るな! 奴と顔が近すぎる。
「ん、あぁ、夕飯奢る約束ね」
限界だ…
胸が痛すぎた。
「編集長、」
俺はタブーを犯した。
事務所を通さず、ノーギャラとはいえ仕事を受け負った。
女史にバレたら、殺され…いや、怒られる、間違いなく。
それでもいい…
話をしないことには進めない。
二人きりで話を。
この後に及んで弥生は夢も誘った。
知り合い設定も、もうどうでも良くなった。
グズグズとする弥生の手首を捕まえると、編集部を後にした。
外に出ると手を放すように言われたけど、放せなかった。
手を離せば逃げられる気がした。
もう、弥生を離したくなかった…