コガレル ~恋する遺伝子~


 車を走らせながら、何から話すべきか迷ってた。
 時間はある、停めてからゆっくり話せばいい、そう思ってた。

「やっぱり降ろして下さい」

 降ろすつもりはない。
 無視した。
 それなのに弥生はシートベルトを外しだした。
 信号待ちで降りるつもりかも知れない、飛び出したら危険だ。
 仕方なく路肩へ車を寄せた。


「言ってなかった」

 助手席の弥生を見れば、思い詰めた表情だ。
 当たり前だ、それだけのことをした。
 それなのにこの後に及んで、その顔が綺麗だって見とれてた俺は馬鹿だった。

「さようなら」

 さようなら…
 何を言ってる…?
 去っていく弥生が信じられなかった。

 戻らない?
 やり直せると思ってたのは、俺だけだったのをこの時初めて思い知らされた。

 身体が動いたのはしばらく経ってから。
 ミラー越しに弥生が道を渡ったのが見えた。
 対向車が途切れるのを待って、車をUターンさせた。

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