コガレル ~恋する遺伝子~
天草へと続く橋を渡ると、シーズンオフの海水浴場で降りた。
不思議な気分だった。
いつかの夢の続きを見てるみたいだ。
目の前の海は、アドリア海じゃなくて有明海に変わったけど。
そんな心の内を弥生が知るはずもなく、俺の手を引いて先を歩いた。
急に腰を屈めたから何事かと思ったら、
「綺麗」と貝殻を拾って俺に見せた。
期待を裏切らない弥生に笑いが漏れた。
俺が今、感じたことのない幸福に抱かれてることを伝えたかった。
でもそれは多分、言葉では上手く伝え切れない。
そんな自分がもどかしくて、貝を持つ手を引くと胸に強く抱き締めた。
回された手が、まるで子供をあやすように俺の背中を優しく叩いた。