コガレル ~恋する遺伝子~
バーのカウンターに並んで座ると、メニューを渡された。
弥生は迷わずスプモーニを頼んだ。
物怖じしないし、予想外にバーに慣れてる。
どこのかは知らないけど、誰かと行ってることは確信した。
でもあえて今夜は問い詰めるのはやめた。
バーテンが酒を置いて向こうへ行った。
目の前には熊本の夜景が広がってる。
たわいもない会話をしてたはずなのに、弥生のある言葉に引っかかりを覚えた。
“今度取材させてもらおうかな” って言った?
言ったな、確かに。
「俺が何しにここに来たか分かってる?」
「…愛の告白」
「…」
「…冗談です」
さっき食堂で俺が言った冗談を、ここでぶっ込んできた。
思わず大きなため息が漏れた。
もう熊本じゃなくても、向こうで仕事を探したらいいだろう。
今までのようにまた俺の家の仕事をしてくれてもいいし。
なんならマンションで俺の帰りを待ってくれてるだけでもいい。
「東京に戻っておいで」
俺の気持ちはこの一言に尽きる。
そばにいて欲しいだけ。