コガレル ~恋する遺伝子~
それなのに弥生の答えには、突拍子もなく成実が出てきた。
成実に憧れてたって。
俺の蒔いた種だ。
話を…
でも俺の否定の言葉は発せられる前に、有無も言わせず遮られた。
「モデルになりたいなんて思いませんでしたよ。まあ、なれる訳もないんですけど」
そうおどけるように言った。
そんなことはない、背さえ高ければ充分通用しただろう。
読モなら今からでもイケそうだ。
数々のモデルを見てきた俺が思うんだから間違いない。
でも絶対にやらせないけど。
さっきもロビーで佇んでる弥生を、何人のサラリーマンが視線をロックしては通り過ぎたことか。
気付いてないだろう。
弥生は自分を過小評価する傾向で、そんなんだから裏方に興味を持ったそうだ。
その辺は涌井と似てる。
出版社を受けて落とされてたことは知らなかった。
で、シュークリームを思い出して、親父の洋菓子屋に来たと。
不思議だな。
もし出版社にいたら俺と弥生の出会いは違う形だったかも知れない。
そもそも出会うことさえ、なかったかも知れない。
そう考えればシュークリームを買ってくれた弥生の母親に感謝だ。