コガレル ~恋する遺伝子~
「奨学金を返してるんです。
働かないとダメなんです」
そういえば白岩が言ってた。
弥生は高校卒業してから上京して、全部一人でやったって。
並大抵の努力じゃなかっただろうに。
自分の大学生時代を振り返れば、何の疑いも持たず親に金を出させて、しかもチャラけた思い出しかない。
話せば軽蔑されそうだ。
「そんなの俺が払うよ」
弥生は首を横に振った。
まあ、薄々そんな予感はしてたけど。
もう充分頑張ったんだし、俺に甘えたらいいのに。
でも真面目なこの人の性格上、これ以上言っても聞かないだろう。
「返し終わるの、あとどれくらい?」
「一年半か二年か…」
二年…とか、ありえないでしょ?
弥生は俺の愛情の奥深さに気づいてない。
どんなに恋しくて焦がれてたか。
まるで分かってない。
弥生は分かってない。
自分のグラスを飲み干すと、なんかムカつく弥生がオーダーしたカクテルも奪って飲んでやった。
それから手を引いた。
俺という人間を分からせてあげる。