コガレル ~恋する遺伝子~

 エレベーターに乗り込んで、すぐに降りると専用スタッフが部屋まで案内してくれた。

「ごゆっくりどうぞ」

 部屋の入口でそう言われた弥生は、律儀に頭を下げてそれに応えた。
 頭を上げた時、その男性スタッフと視線を絡めた気がして、俺は遮るようにドアを閉めた
 部屋の中へ歩くと、眼下にある熊本城がさっきよりわずかに近く感じた。

 手をつないだままの弥生をソファに座らせると、俺も隣に腰掛けた。
 立ち上がろうとするのを留まらせて言った。
 さっき、バーで弁明させてもらえなかったから。

「成実だけど。一緒に住んでない」

 あの部屋に足を踏み入れた女性は、弥生だけだ。
 和乃さんを除いて。

「知ってます。
歯ブラシが一つしかなかったし、お風呂も女優仕様の物は見当たらなかったから」

 まさか、観察されてたのか。
 抜けてるようでもやっぱり女だ。
 でもそんなこの人も愛しく思えるから、俺の頭は完全に沸騰してる…
 苦笑いするしかなかった。
 分かってたのに黙って去った弥生の方がよっぽど大人だった。

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