コガレル ~恋する遺伝子~
「寝てないから、成実と…」
これだけは分かって欲しい。
弥生と出会ってからは、触れたいのは弥生だけだって。
もちろん繋がりたいのも弥生だけ。
「成実さんは圭さんを…」
抱きしめたら言葉は途中で止まった。
成実とはマンションのエレベーターで別れたっきり仕事でも会ってない。
たとえこの次会ったとしても何の感情も湧かないだろう。
成実も分かってくれてるはずだ。
「ごめん、もう大丈夫だから」
もし万が一、誰であれ俺の懐へ入り込もうとする奴がいるなら、きっぱりと拒絶する。
そんなつまずきで、弥生が俺から離れていくとしたら耐えられない。
俺を抱きしめ返す弥生の腕に、力がこもったのが分かった。
後頭部に手を添えると、余計に俺の胸に密着させる。
弥生の頬も胸も俺に預けられた。
腕の中の愛しすぎる存在の髪を撫でる。
「ねぇ、」
「ん?」
「弥生が待てって言うなら、何年でも待つよ。
東京でハチ公みたいに」
そう、まるで犬だし。
弥生に掛かれば、大人しくて従順な犬にだってなるよ、俺は。
そんな哀れな男に、この人は言った
「超大型犬…」って。