コガレル ~恋する遺伝子~


「寝てないから、成実と…」

 これだけは分かって欲しい。
 弥生と出会ってからは、触れたいのは弥生だけだって。
 もちろん繋がりたいのも弥生だけ。

「成実さんは圭さんを…」

 抱きしめたら言葉は途中で止まった。

 成実とはマンションのエレベーターで別れたっきり仕事でも会ってない。
 たとえこの次会ったとしても何の感情も湧かないだろう。
 成実も分かってくれてるはずだ。

「ごめん、もう大丈夫だから」

 もし万が一、誰であれ俺の懐へ入り込もうとする奴がいるなら、きっぱりと拒絶する。
 そんなつまずきで、弥生が俺から離れていくとしたら耐えられない。

 俺を抱きしめ返す弥生の腕に、力がこもったのが分かった。
 後頭部に手を添えると、余計に俺の胸に密着させる。
 弥生の頬も胸も俺に預けられた。
 腕の中の愛しすぎる存在の髪を撫でる。


「ねぇ、」

「ん?」

「弥生が待てって言うなら、何年でも待つよ。
東京でハチ公みたいに」

 そう、まるで犬だし。
 弥生に掛かれば、大人しくて従順な犬にだってなるよ、俺は。

 そんな哀れな男に、この人は言った
「超大型犬…」って。

< 297 / 343 >

この作品をシェア

pagetop