コガレル ~恋する遺伝子~
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弥生と一緒に編集部に入った。
夢とカメラマンともう一人、昨日は見かけなかった男がいた。
弥生と話始めると、そっち系の人間だとすぐに分かった。
まぁ、害はないだろう。
皆揃ったところで、準備が開始された。
俺は弥生の席に座るように言われて、そこでまずヘアメイクされることになった。
挨拶を交わしたら、その人は嶋と名乗った。
福岡でメイクアップアーティストをやりながら、指導なんかであちこちに出かけるそうだ。
腕は確かだ。
業界にはそっちの人は珍しくもない、俺も特に違和感は持たなかった。
向こうの部屋ではカメラマンと弥生が撮影の準備真っ最中。
作業しながらも何かヒソヒソと話して、時々笑い合ってる。
気になってそっちをチラチラと見てると、嶋さんに正面を向けとばかりに首の向きを直された。
「弥生ちゃん、雰囲気変わったのは、真田さんがいるからなのね」
突如、そんな話を振られた。
特に返事はしなかった。
「前は妙に大人びて憂いのある感じだったもの。今は恋してキラキラ輝くお嬢さんって感じね」
他人からはそんな風に見えるのか、とまた向こうを見てしまう。
「鼻の下伸びてるわよ」
今はメイクに取り掛かった嶋さんにそうからかわれながら、首を戻された。
「彼女、モテるわよ。弥生ちゃんが営業に行くと広告主がよく釣れるって、ここの編集長が言ってたもの。まあ、みんな下心よね」
「勘弁して下さい」
「放ったらかしにしたら、痛い目に遭うってことよ」
嶋さんは、俺の肩をポンと叩くと全メイクの完了を告げた。