コガレル ~恋する遺伝子~


***


 弥生と一緒に編集部に入った。
 夢とカメラマンともう一人、昨日は見かけなかった男がいた。
 弥生と話始めると、そっち系の人間だとすぐに分かった。
 まぁ、害はないだろう。
 皆揃ったところで、準備が開始された。

 俺は弥生の席に座るように言われて、そこでまずヘアメイクされることになった。
 挨拶を交わしたら、その人は嶋と名乗った。
 福岡でメイクアップアーティストをやりながら、指導なんかであちこちに出かけるそうだ。
 腕は確かだ。
 業界にはそっちの人は珍しくもない、俺も特に違和感は持たなかった。

 向こうの部屋ではカメラマンと弥生が撮影の準備真っ最中。
 作業しながらも何かヒソヒソと話して、時々笑い合ってる。

 気になってそっちをチラチラと見てると、嶋さんに正面を向けとばかりに首の向きを直された。

「弥生ちゃん、雰囲気変わったのは、真田さんがいるからなのね」

 突如、そんな話を振られた。
 特に返事はしなかった。

「前は妙に大人びて憂いのある感じだったもの。今は恋してキラキラ輝くお嬢さんって感じね」

 他人からはそんな風に見えるのか、とまた向こうを見てしまう。

「鼻の下伸びてるわよ」

 今はメイクに取り掛かった嶋さんにそうからかわれながら、首を戻された。

「彼女、モテるわよ。弥生ちゃんが営業に行くと広告主がよく釣れるって、ここの編集長が言ってたもの。まあ、みんな下心よね」

「勘弁して下さい」

「放ったらかしにしたら、痛い目に遭うってことよ」

 嶋さんは、俺の肩をポンと叩くと全メイクの完了を告げた。


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