コガレル ~恋する遺伝子~
「真田さん、もう少し笑顔を」
一つも面白くないし。
「じゃ、君が笑わせてよ」
そう答えたら、カメラマンに睨み返された。
オロオロする弥生も視界の端に見えた。
弥生を疑ってる訳じゃない。
弥生と一緒にいられるコイツが羨ましいんだと思う。
分かってる、これじゃただの八つ当たりだ。
表紙撮りは終わって、セットチェンジの間部屋の外に出された。
コーヒーを飲んでたら、嶋さんが笑顔で近づいてきた。
髪を手直ししてもらうと、今から福岡に戻ると言う。
そんな報告にも気はそぞろ、弥生がカメラマンと一緒にテーブルやイスを移動させるのを眺めた。
「案外、真田圭って余裕がない男なのね」
耳元でそう囁かれて引き戻される。
面白い玩具を見つけたかのように、俺に絡んでくるオネエ。
それでも不思議と嫌悪感は湧かなかった。
「不安なんです。情けない男ですよ、俺は」
自嘲気味に笑うと肩をポンポンと慰めるように叩かれた。
「嶋さん、」
向こうへ歩き出した肩幅の広い男、もとい女を呼び止めた。
「福岡までどれくらい時間がかかりますか?」
「まさか、私を追いかけてくるつもり?」
振り向きざま、そんな冗談を返された。
「俺が誰に一途なのか知ってるでしょう」
素直な告白に呆れながら、大まかな時間を教えてくれた。
「これから真田圭を応援することにしたわ、私」
そう言った後ろ姿を見送った時、準備ができたと弥生が知らせに来た。