コガレル ~恋する遺伝子~

 福岡のデパートの駐車場に車を止めると、某ブランドの宝飾売り場へ足を踏み入れた。

 制服を身に着けた小奇麗な女性と目が合うと、一瞬の驚いた顔。
 頼みもしないのに、イスとテーブルのある奥に案内された。

「本日はどういった物をお探しですか?」

 向かい合って腰掛けるとそう聞かれた。
 ベテランの販売員なんだろう。
 気を利かしてここに通してくれたらしい。

「ペアリングを」

 今日持って帰りたいってことも伝える。

「お相手のお指のサイズはご存知ですか?」

 それは聞かれるって分かってたけど、さっき思いついたことだ、サイズは知らない。
 サプライズで渡したいし。

「すみません、大変失礼ですが、お手を拝借できますか?」

 俺の不躾なお願いに目の前の販売員は、不思議そうな顔をして手を差し出した。
 まるで手相を見てもらうように。

 笑顔を見せてその手をひっくり返した。
 手を握ったまま、販売員の薬指のサイズを教えてもらう。

「なるほど」

 役目を終えたその手をそっとテーブルに置いて考える。

 弥生の指は一つか二つ細いサイズだと思う。
 でも入らないと困る。
 安全圏で一つ下のサイズを販売員に告げた。

 聞く人が聞いたら、細さを比べられたようで不快を示すだろう。
 でも目の前の販売員は幾分頬を染めてるから、結果オーライとしておこう。

 俺の指のサイズはこの場で測ってもらった。
 それから二つのサイズが今日揃うリングをいくつか並べてもらう。
 その中で弥生が普段身につけやすそうな、派手すぎないデザインの物を選んだ。

 清算してる間に、サイズ直しや刻印は東京の店でも後日可能と説明された。
 一度クリーニングされたそれは化粧ケースに並んだ。

 俺は渡された紙袋を助手席に積むと、一路熊本へ引き返した。

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