コガレル ~恋する遺伝子~


 仕事の終わった弥生を車でピックアップすると、歩いて夕食に良さそうな店を案内してくれると言う。

 連れて行かれたそこは居酒屋と銘打ってるけど、酒も料理もイケる店だった。
 運ばれてくる料理は焼酎に合って、どれも美味い。
 よく聞けば冗談ばっかり言ってる店の親父さんは、その昔料亭の板前だったそうだ。

 少し酔いを感じながら、ホテルまでの道を歩いて帰った。
 弥生は行きの道もそうだったように、人の目が多い場所では離れて歩く。
 それはもし撮られたとしても、言い訳が効く距離だ。
 俺が強制した訳じゃない。
 弥生が俺に気を使ってそうしてる。
 また下衆な週刊誌の餌食になりそうで、自分から手を伸ばすことはできなかった。

 弥生がはぐれてないか、時々振り返るのが癖になった。
 振り返って目が合えば、微笑みが返された。
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