コガレル ~恋する遺伝子~
 諸々の事柄を終わらせると、向こうの部屋へ行く。
 白白と夜の明けた景色が目に飛び込んできて、自分のタフさに呆れた。

 化粧ケースから指輪を出すと、まずは自分の指に嵌めた。
 それから眠る弥生の前に戻って、右手を取る。

 一度眠りに就くとなかなか起きない人で、この時ばかりは助かった。
 まごついたけど、薬指に嵌めることができた。
 俺の見る限り良い感じだけど、後で指への収まり具合を聞いてみよう。

 指輪の嵌った手に唇を押し付けた後、俺も横になった。

 自分の指輪を眺めた。
 この指輪は大した意味がない。
 弥生の指輪には他の男を牽制する役目も与えた。
 昼間、嶋さんに余裕がない男と言われた。
 全くその通りだ。

 弥生の浮気はこれっぽっちも疑ってない。
 ただ周りが弥生を放って置かないだろう。
 これは俺の欲目じゃないと思う。
 熊本で会った人達もそう。
 嶋さんも、居酒屋の大将だって随分弥生を気に入ってた。
 東京に残された人間だってそうだ。
 ボロ家の大家も、和乃さんも、杉崎も。
 准や親父でさえ、弥生が戻ることを歓迎するのが目に見えてる。

 男女年齢問わず、弥生を知れば魅了されて構いたくなる。

 分かってんのかね…
 弥生の鼻の先を指で押した。
 何とも言えない面白い表情を見せてから、寝返りを打ってしまった。
 ベッドでの泣き顔も、こんな変な顔も、見られるのは俺だけで充分。

 弥生を背中から抱きしめると、俺も眠りへと落ちていた。


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