コガレル ~恋する遺伝子~
「だって結婚指輪は、自分で好みなの選びたいでしょ?」
さっきから仄めかしてる “結婚” を匂わせるワードは何故か綺麗にスルーして、弥生は指輪を眺めた。
嬉しそうだけど、それに込められた真意は不純だ。
やっぱり来たるべき日には、きちんとした物を買いに行こう。
そんな思いを知ってか知らずか、弥生は俺の胸に半身を乗せて抱きついてきた。
「圭さんのそばにいられるなら、指輪なんてどうでもいい…」
たぶん俺の顔は史上最大に緩んだと思う。
俺をこんなに一喜一憂させるのは、世界中にたった一人、この人だけだ。
そんな浮かれ気分な胸が、一際重くなったことに気づいた。
寝てるし。
首を持ち上げて見れば、呼吸で上下する俺の胸の上で、喋りもせず動かなくなった人。
弥生の胸も違うリズムで上下してるのが、皮膚を通して伝わってきた。
三日目の部屋で、もう見慣れたデジタル時計をチラッと見た。
チェックアウトの昼まで時間はある。
弥生をひっくり返すと、邪魔な掛け布団を向こうへやった。
眠気は飛んだだろう。
暗くして、と懇願するのは無視した。
そのままギリギリの時間まで弥生の身体を離さなかった。