極上スイートオフィス 御曹司の独占愛
甘い空気に突如割り込んだ雑音は、私をすぐさま正気に戻す。
あ、危なかった、完全に飲まれてた!
「お、送っていただいてありがとうございました!」
上擦って必要以上に大きな声になってしまったが、そうでもなければまた飲み込まれてしまいそうだったのだ。
朝比奈さんはぱちぱちと目を瞬いて、ふっと微苦笑を浮かべる。気が抜けたような、緩い笑顔のせいで私は油断していた。
「どういたしまして。じゃあ、約束忘れないで」
避ける間もなく彼の唇が頬を軽く啄んで、くしゃくしゃっと髪をかき混ぜたかと思うと、すぐに踵を返して急ぎ足で車へと戻って行った。
突然の頬へのキスに抗議する暇もなく、階段を駆け下りる彼の足音は遠ざかってしまった。
頬を抑えながら、無言で玄関ドアを開け、じわじわと恥ずかしさが込み上げてきたのは部屋に入ってからだった。
ほ、頬にちゅーって。
いい大人がする?
かー、と血が上って首から顔から熱くなった。
彼に見られなくて済んで、良かったと思う。