極上スイートオフィス 御曹司の独占愛
私がお店にいた頃の朝比奈さんとの出来事と言えば、本当に少ない。
月に一度くらいはお店に来ていたような気がするけれど、大抵は当時の店長と仕事の話だとか、百貨店側の洋菓子フロア長と話をしていたりだとか、事務的なことが多かったはずだ。
あの頃から……と彼は言っていたけど、本当、さっぱりわからない。
店舗勤めの一年間から朝比奈さんに繋がる記憶を思い出そうとしていて、手が止まっていることに気が付く。
……だめだ。ボケてる場合じゃない、早く包装してしまわなきゃ。
ペチ、と片頬を叩いて、頭の中から朝比奈さんを追い出した。
この頃の私は、いつもこうだ。
気が付けば、朝比奈さんのことを考えてしまっていて、慌てて追い出すの繰り返し。
だって、朝比奈さんは結局、何も明かしてくれてなくて、気になる要素だけが増えてしまっているのだから仕方ない。
そしてそれすらも彼の思惑なのかと思ってしまうのに……自分が彼に気を許し始めていることにも気が付いている。
そんな私の変化にすぐに気が付いたのは、伊崎だった。
今一体全体どうなってるのか説明しやがれと先日ランチを奢らされた。
無理矢理説明させられてるのは私なのに、奢るのも私だなんて何かがおかしい。
かなり怖い顔を目の前にして、私はここ数日で起きたことをほぼ正直に喋らされた。
てっきり、また流されてるだのなんだのと口うるさい母親のようなことを言われるのかと思ったが、違った。
話している間中私の顔をじっと見ていたかと思ったら、ふっと溜息を吐いた表情はとても面白く無さそうではあったが。
「吉住は、朝比奈さんとどうなりたい? 俺は、吉住がまたしんどい思いをしなけりゃそれでいい」
ぶっきらぼうな言い方だったけれど、随分と優しいことを思っていてくれたのだと、びっくりして箸が止まってしまった。