極上スイートオフィス 御曹司の独占愛
……なんてのんきなことを言ってられたのは最初だけだった。


「……朝比奈さん、待って。縦結びになりますよそれじゃ」

「あ、ほんとだね」

「あ、あ、あ。すみませんそれ私やり直します」


一度結んだリボンは、シワになってしまって結び直しが難しくなる。
朝比奈さんの失敗したものを私が結び直しているうちに、彼はまた新しいものに手を付ける。


彼がひとつ結んでいる間に私は三つ結んで、それから彼の失敗作をカバーして。


「すみません朝比奈さん。余計手間かかります」


戦力外通告を出させてもらい、彼の手元から商品を遠ざけた。
三十分我慢した私を褒めてもらいたい。


「ごめんね。せっかく来たんだから何か手伝いたいんだけど」

「じゃあリボン切っててください。この長さで」

「うん、言い方に遠慮がなくなってきたよね」

「ほんと時間無いので」


っていうか、そもそも統括が手伝うような仕事じゃないんですけども。


統括にリボン切り作業なんて雑用を押し付けてしまった自分に、ちょっとヒヤッとした。


私に指示された通りに、しゃきん、とハサミの音が聞こえる。
ついつい偉そうに言い過ぎただろうかと、ずっと忙しく手元を見ていた顔を上げた。


さすがに気を悪くしたかもしれないと思ったのだけれど、彼は顔色ひとつ変えておらず穏やかなままであり、私の視線に気づいて更に柔らかく微笑んだ。


「何?」

「あ、いえ。急いでるものでつい偉そうに言ってしまったので……気を悪くされたかなーって」

「どうして? 僕が邪魔してるのは明らかだし」

「邪魔、ってまでは言いませんが」


ぶっちゃけ邪魔でした、というのは心の中に押し隠したつもりだったのだけど、もしかしたらそれを見破られたのかもしれない。


「ああ、でもひとつ厳しいことを言わせてもらおうかな」

「え」

「この催事、毎年振るわないって聞いてたけど、それにしても予算落とし過ぎだよね」

「うっ」


それまでの軽口とまったく同じ口調で、ずばっと苦しいところに切り込まれた。

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