極上スイートオフィス 御曹司の独占愛
閉店後のバックヤードは、閉店作業や倉庫整理で多少の人は行き交うものの、静かなものだ。
販売員たちを帰してしまってから、急にそのことに気が付いて今更ながらにふたりきりの空気が気まずくなった。
それから更に、人の気配が無くなって、会話もなんだかぽつぽつとしかなくなってしまった。
……なんか、居心地が悪い。
「お、お腹空かないですか?」
「うん? 何か買ってこようか、それともこの後どこかで食べる?」
リボンをあらかた切り終わってしまった彼は、私の手元をじっと見ては、タイミングを見て切ったリボンを手渡してくれている、だけ。
「いえ……もう十分手伝ってもらったので、ありがとうございます。朝比奈さんはもう帰ってください。私はもう少し頑張ってから立ち食いうどんでも飛び込みます」
「じゃあ僕もそれでいいよ」
「朝比奈さんが立ち食いとか、なんか似合いませんね」
つい笑ってしまったが、彼の方はきょとんとしていた。
「僕だって立ち食いくらい食べるよ? 吉住は珍しいね。女の子ってひとりで入る子少なそうだけど」
「店舗に居た時、結構みんなで行ったので、慣れてるんです。伊崎ともよく行きますよ。忙しい時はホント便利なのでつい」
「へえ」
立ち食いうどん屋は、本当にありがたい。
深夜近くになったり、それまでろくに食事もとれなかったり、飲食店に入ってのんびり食べる気力もないような日が、繁忙期に入るとざらにあるのだ。
そんな時にさっと出て来てさっと食べれて胃に優しい、しかもほっと温まる立ち食いうどんは涙が出るほど美味しい。
「クリスマス前の繁忙期とか、ほんとありがたいです。終電間際に伊崎と一緒に飛び込んだことがあって、あと数分で電車来るっていうのに、」
「じゃあ今日は僕もそこに連れてってもらおうかな」
何か、言葉をわざと遮るように言われた気がして、驚いてリボンを結んでいた手を止め顔を上げた。
そんな私に、彼はにっこり微笑んでいたけれど。
「そんな遅い時間にわざわざ一緒に行くくらいなんだから、よっぽど美味いんだろうと思って」
表情と裏腹に、何か声音が、変わった気がする。
「え……と、わざわざっていうか。忙しい時期なんてみんな一緒だし時間帯合うことが多くて?」
「そうだろうね、エリアも隣だし」
「そう、そうなんです」
だからよく会うってだけのことで、特に深い意味はないんです……ってなぜこんな言い訳をしなければいけないのか。