極上スイートオフィス 御曹司の独占愛
正面を見て、グラスのふちを彼女の指が辿る。
私に視線を向けずにそう言った彼女の頑なさは、あの夜私に形だけのお詫びをして去っていった表情そのままだった。


「気付かされたところで、今更簡単に見方を変えるなんてできないけれどね」


手にしていたスマホが着信を知らせて振動を伝えてくる。
きっと朝比奈さんだろう、と思いながら私は画面を伏せて膝に置いた。


今まで、この件の当事者なのに朝比奈さんに任せたままで、私自身倉野さんに何一つ自分の言葉を言えてなかった。
一言くらい、私は彼女にぶつかるべきだ。
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