極上スイートオフィス 御曹司の独占愛
そこまで言って、すごくすっきりした。
もうこれ以上、話すことはないと思った。


倉野さんの価値観や基準を反論するつもりもないし、ただ違う価値観の人とは話は出来ても理解を得ることはできない気がした。


バッグから財布を取り出し、会計のためバーテンダーに声をかける。
スツールから降りた時だ。


「吉住さん」


彼女に呼び止められた。
彼女もまた、スツールを降りて真直ぐ私に向かって背筋を伸ばしていた。


その綺麗な姿勢が、ゆっくりと腰を折る。


「三年前、わざとあなたが不安を抱くような言葉を使い、コンプレックスを抱くように仕向けました。今更謝って済むことではありませんが……本当に申し訳ありませんでした」


あの夜のおざなりなものではない、心からの謝罪に思えた。


確かに今更だ。
だけど朝比奈さんも言っていた。


きっかけではあっただろうけど、きっと問題は私たちの中にあった。


「気にしていません。その分、少しは変われたかなと思ってますから」


それが今は、私に自信につながっている。


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