極上スイートオフィス 御曹司の独占愛
外回りを終えて、会社に戻って来たのは夕方五時頃だった。
「六時半に店取ってあるんで! 各自向かってくださいね!」
幹事をしてくれたサブの女の子が、オフィスに残っている全員に声をかける。
朝比奈さんは、今はここにはいない。
恐らく、役員室の方にいるのだと思う。
まだ時間に十分余裕はありそうで、私は先に今日の仕事の整理と明日の準備を少ししてから向かうことにした。
向いのデスクのパソコンの影から顔を出すのはおなじみ伊崎だ。
ひょい、と効果音が付きそうな勢いで出てくるのは、何かかわいらしさを狙ってるのだろうか。
でかい図体でそんなことしてもあんまり可愛くない。
「いつ出る?」
「もうちょい仕事してから出るつもり。伊崎は?」
「俺も。じゃあ一緒に行こうぜ」
「え? いいよ伊崎は伊崎のタイミングで行ってくれても」
「……お前冷たいな」
いいだろ別に、とPCの向こうで伊崎が拗ねている。
「心配しすぎだって。みんな一緒の飲み会だよ」
と、小声で言った。
帰りもカナちゃんが一緒に居るから問題なく抜け出せる。
朝比奈さんがどうしても私と話したいなら、皆が居る時に話せばいいのだ。
それなら、彼も昔のことをぶり返すような会話はしてこないだろう。
定時を少し過ぎた頃に、結局伊崎と一緒にオフィスを出た。
歓迎会の場所は、最寄り駅の近くにあって、帰りも楽だしカナちゃんが少し覗きに来るのにもちょうどいい。
その後は、カナちゃんの食事に付き合う約束もしてるから、二次会云々も角が立たずに断れるし、主役の朝比奈さんは間違いなく、駆り出されるはず。
よし完璧。
用意周到準備万端整えたせいか、嫌だ嫌だと思っていた歓迎会へ向かうにも、案外足取りが軽かった。
「何、お前なんでそんなご機嫌なの」
「は? お腹空いてるからだけどなんでそんな突っかかる言い方すんの?」
店に着いて軽口を叩きながら大座敷の引き戸を開ければ、横長の畳の間に机が並べられ、約二十人くらいだろうか、既に大方の人間は集まっていた。