極上スイートオフィス 御曹司の独占愛
「倉野さん」


専務の秘書の倉野百合さんだった。
こうして話すのは初めてだったけど、彼女のことは知っている。


何日か前、専務に朝比奈さんが呼び止められた時、彼女もそこにいたからだ。


「私、絆創膏持ってるわよ。向こうに行きましょうか」

「す、すみません」


促されるままに、お手洗の入口を入ってすぐ横にあるパウダールームに向かった。
幸い誰もおらず、ふたりでスツールに並んで座る。


パンプスを脱いでいると、彼女も覗き込んできた。
店舗に居た時も立ち仕事だったからマメが出来たりして皮膚が固くなって、あまり綺麗な足ではなく少し恥ずかしかった。


「可哀想、赤くなってるわね」

「ありがとうございます。後で貼らせてもらいます」


ストッキングがあるので今ここでというわけにはいかず、彼女が差し出してくれた絆創膏を、ありがたく受け取った。


「朝比奈さんと仕事するのは大変でしょう。こんな無理して」

「いえ! 今はちょうど、バレンタインも控えてるのでずっとバタバタしてて、それだけです」


クリスマスの後から、一月に入ればすぐにバレンタインの準備で慌ただしくなる。
その後ホワイトデーと、暫くは気が休まることがない。


「まったく……彼ももう少し気遣ってあげればいいのに。誰もが皆自分と同レベルで仕事ができるわけないのにね」


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