極上スイートオフィス 御曹司の独占愛
「あ、何?」
「何って……話しかけても反応ないから。どうかした?」
「何でもない。ぼーっとしてた」
今、考えたらだめだ。
平静を保てなくなる。
伊崎の顔を見て、かろうじて笑顔を浮かべる。
だけど、食事はそれ以上喉を通らなくて、結局食べきれないまま待ち合わせのバーに向かった。
ほとんど胃袋に食べ物が入ってない状態でのお酒は、ひどく回る。
皆の会話についていけてないけど、ぎりぎり悟られないよう相槌を打ったり無理に笑ったりしていた。
その間も、ずっとさっきの朝比奈さんと倉野さんの姿が頭の中をちらついて、正直気が気じゃなくて、つい目がちらちらとスマホの画面をチェックする。
何か、連絡が入らないかと、期待して。
何か理由があって彼女を乗せたけど、今はふたりじゃないという、手がかりが欲しくて。
「ねえねえ! 吉住さんも見たの? それ!」
不意に多田さんに話を振られて、ぱっと顔を上げた。何も耳に入ってなくて、慌てて笑いながら「何が?」と尋ねれば。
「だから、朝比奈さんと倉野さん! 伊崎が駅前で見たって」
今絶対、触れたくない話題だった。