極上スイートオフィス 御曹司の独占愛
「ああ、うん。見たよ」


頷くと、小野くんが妙に納得した体で頷いた。


「倉野さんって言ったら、秘書課で一番の高嶺の花って先輩らが言ってたけどな」

「へー、どういう意味で高嶺の花?」

「美人で品があって仕事が出来て、そこらの男じゃ声もかけられないって意味。そりゃ朝比奈さんが相手だったら他には目もくれないよなあ」

「朝比奈さんは男版高嶺の花って感じだし、お似合いだよね。ねえ、吉住さん」


多田さんの目が、興味津々で私を見て、私は咄嗟に立ち上がった。
朝比奈さんと組んで働いてるんだから、何か知らないかと聞かれるような気がしたからだ。


「ごめん、ちょっとお手洗」

「あ、大丈夫? 気分悪い?」

「大丈夫。ちょっと疲れてるのかな。酔いが回っちゃって」


なんとか笑いながら、バッグを手にお手洗に向かう。
個室に入ると、すぐにスマホの画面を叩いてメッセージアプリを開いた。


通知も何もないのだ、連絡が入ってるわけはない。
それでも、抑えが効かなくて着信履歴を開いたり、意味がないことを繰り返す。


朝比奈さん、今、どこ。
まだ倉野さんと一緒に居るの?


きっと、何か理由があるんだ。
聞いたらちゃんと教えてくれるはず。


メッセージで聞いてみようか。
さっき、倉野さんと一緒でしたか、って。


どうにかして、朝比奈さんを信じる要素を探そうとして、それにはやっぱり本人に聞くのが一番だとわかっている。
だけどどうしても、助手席に乗った倉野さんの姿が脳裏に焼き付いていて恐ろしかった。


文字を打ったり消したりを繰り返しながら、だんだんと視界がぼやけて、ぽた、と雫がひとつ、画面に落ちた。


『朝比奈さんは男版高嶺の花って感じだし、お似合いだよね』


夢みたいだと、ずっと思ってた。
なのに倉野さんと朝比奈さんだと、誰の目に見てもお似合いなのだ。

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