極上スイートオフィス 御曹司の独占愛

結局、泣いてしまった私は席に戻れなくなって、かといってトイレを占拠しているわけにもいかず一度店の外に出た。


酔ったから外の風にあたって来る、とグループラインに送信しておく。
戻らない私を心配して探してはいけないと思ったから。


幾分、泣いてすっきりした。
風にあたって、酔いも少し醒めて来た。


冷静に考えてみれば、助手席に女の人を乗せただけだ。


ただ、倉野さんと朝比奈さんの接点がわからないから不安なだけで、きっと聞けば納得できるような答えが返ってくる。
後は……そう。


ただ単なる、私のコンプレックスだ。
私にはもったいない人だと思っている朝比奈さんに、倉野さんが並んだらなんだかとても……お似合いだと思っただけで。


多田さんが言ったように、誰の目にもきっとそう見えるだろう、それが結構、大打撃だった。


「あ、いた。吉住」

「あ。伊崎、ごめん」


店の外、ジュースの自動販売機の近くで壁に凭れていた私は咄嗟に目を逸らして泣いた後を悟られないようにした。


「気分悪いなら帰るか? 送ってくけど俺」

「いいよ、大丈夫。ごめん、やっぱ疲れがたまってたみたいであんまり飲めなかったあ」

「……吉住ってさ、朝比奈さんとなんかあんの?」

「え?」

「あのふたり、見てからなんか変だから」


心配そうにこちらを窺う伊崎に、私は言える言葉がひとつしかなかった。


「なんで? そんなわけないよ。でもちょっと、朝比奈さんには憧れてたから、ショックだなぁって」


嘘にホントを織り交ぜれば、真実味が出るというのは本当らしい。
伊崎は少し、ほっとした顔をして言った。


「ならいいけど。やっぱ顔色悪いし今日は帰れよ、飲み会はまたいつでもできるし。送るわ」

「……そうしようかな。うん、疲れは、たまってるしね」


正直、戻ってまた倉野さんと朝比奈さんの話になるのはしんどかった。
だけど、送ってもらうのは断って、しつこい伊崎に自分の飲み代に足りるだろう額のお札を押し付けさっさとタクシーに乗った。

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