極上スイートオフィス 御曹司の独占愛
……嘘だよね?
倉野さんといるの、見たよ?
あの時の倉野さんの表情は、仕事のようには見えなかったし、自家用車に乗ってたってことはあれは帰りじゃなかったの?
そもそも、倉野さんと関わる仕事はないよね?
胸の中に溢れだす言葉を、ぐっと飲み込んで、嫌味なく尋ねる言葉を見つけられる自分であればよかった。落ち着いて考えれば、そんな言葉も見つかっただろうか。
だけど、今何かを聞こうとすれば、何をどう言っても疑ってるようにしか聞こえない気がして、何も言わずに信じてくれた朝比奈さんに対して、疑ってしまう自分は余りにも醜い気がして……私は、笑った。
「そうなんですね。良かったです、ゆっくり休めて」
一度、そう取り繕ってしまったら。
後はもう、悪循環だった。
信じなければ。
そう強く自分に言い聞かせることそのものが、疑っているに違いなくて、そのことに気づいては自己嫌悪する。
朝比奈さんの隣に立つに相応しい人間になりたい。
変に狼狽えて、嫉妬したり疑ったり醜い自分を見せたくない。
そう思い直して背筋を伸ばしても、またすぐに、だからといってやっぱりあれは嘘にしか思えないと最初に戻る、繰り返し。
自分に自信がないからだ。
倉野さんに負けないくらいに仕事も出来て、少しでも綺麗でいられるように、そんな自分になれたらきっとこんな嫌な感情は抱かなくてすむ。
それからは、朝比奈さんが先に帰っていいよと言っても絶対に帰らなかった。
どれだけ遅くなっても、朝比奈さんが外出していれば社内で彼の帰りを待ったし、少しでも手伝えることはないか必死で仕事を探した。
ちょうどどの店もバレンタインフェアに突入し、トラブル対応や商品手配に追われ仕事は山ほどある。
がむしゃらに働いて、そんな私に朝比奈さんも気づいているのか時折心配そうな言葉をかけてくれるけど、彼自身も何かと忙しそうで、ちらちらと余裕のない表情を見せることも多くなった。
「お前さあ、こっちにも仕事回せって。専属だからって他に回したらだめってことはないだろ?」
伊崎もまた、私の変化に気づいていたけど、私はうんとは言わなかった。
朝比奈さんの専属だからと、他の人の仕事は依頼されないのだ。
私が手が回らないからって誰かに頼ったりしたら、また佐々木さん辺りに何か言われるに決まってる。
「いい。ちゃんと把握しときたいから自分でやる」
パソコン入力をしながら、画面から目を離さずにそう言った私に彼は溜息を吐く。