美魔女オネェに拾われたなら
あの感じはと、思わず小声でレンさんに確認する。


「ねぇ、レンさんあの人もしかして・・・」


「さすがなっちゃん、察しがいいわね。当たりよ…」


レンさんもボソッと小声で返してくれた。


するとこちらに気づいたのか例のモデルさんが、


「あ、居るじゃない!話できる人が!スタイリスト部門の統括マネージャーさんなら話せるわよね?!」


そう智子さんに威圧的に言うとすぐこちらに近づいて来る。


イチさん大丈夫かなとチラッと見ると、イチさんは怖いくらいのいい笑顔。
え?これで寄って来れるの?この人?
すごいな、私ならこの状態のイチさんには近付かないけれど。


自分が!ってのが強い人なんだろうな。

綺麗なんだろうけれども、この時点で私はこの人とは相容れないと確信した。

私の唯一のお友達は見た目も心も綺麗な子だから、外側だけの子はどうにもならない事をよく知っている。


しかも同じ業種のモデルさんをしてる。
まだまだと言うけれど彼女は輝いてるし、溌剌としてるから。
やっぱりこの人とは全然違う。


そんな事を思っていたら。


「ねぇ、統括マネージャーさん!貸出要望の衣装。ちゃんと借りられるわよね?問い合せてもあの事務のおばさん答えてくれなかったから、わざわざ足を運んだのよ!あのコートで絶対写真を撮りたいのよ!」


そうキツめの口調でネイルを見つつ、イチさんに言い寄っている。


「ほんと、感性は悪くないしメイクの腕もいい人多いけどここはクセが強くて嫌なのに。うちの社長は贔屓にしてんのよねぇ。でもあのコートは気に入ってるの。だから着たいのよ!借りられるわよね?」

さも当然という態度と、おネエである皆を蔑むような発言にさすがにイラッとくる。
思わず口を出そうとしたらレンさんに前に出るのを止められ、さらに後ろから肩を掴まれて止められた。

振り返れば、そこにはあっちゃんとさっちゃんが揃っていた。



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