裏生徒会部+
男の人が淹れてくれた水を飲み終わると、それを見計らってか再び話を始める。
「“名前はなんていうんだい?"」
「“…凪"」
「“ナギか。お家の場所はわかるかい?"」
その質問に首を横に振る。
場所は分かっても、住所や具体的なことを分からなかったからだ。
「“えぇっとじゃあ…お父さんやお母さんは?"」
「“お父さんはいない。お母さんは……"」
ここで凪さんは口籠った。
つい数日前まではいた。毎日傍にいた。
だけど今は…待っても待っても戻ってこない。
「“……いない"」
「“そう…か"」
男の人はしばらく黙ったまま何かを考えると、椅子から立ち上がった。
「“ちょっと待ってて"」
その言葉を聞いた瞬間、凪さんは無意識に手を伸ばし、男の人の服を引っ張る。
またこの人も戻って来ないんじゃないか、そう思ったからだ。
男の人は驚いた顔をしたが、その手を握り、優しく微笑んだ。
「“大丈夫。すぐに戻ってくるよ。君に会わせたい人がいるんだ"」
「“会わせたい人?"」
「“そう。だから少しだけ待ってて"」
頷き、そっと手を離す。
それを確認すると、男の人は部屋を出て行った。
そして、数分後、約束通り男の人はちゃんと戻ってきた。
綺麗な女の人を連れて。
「“紹介するよ。ナギ、君のお母さんのリディリアだ"」
「“リディリアよ。よろしくね、ナギちゃん"」
柔らかな話し方をして、優しい笑顔を見せてくれる。
「“お母さん…?"」
「“そう。で、僕はお父さんのアルスだ。よろしくな、ナギ"」
「“お父…さん"」
最初は戸惑いもしたが、2人の優しい言葉と笑顔に自然と凪さんも笑顔を見せた。