オードリー
私と釣り合わない彼女
「あんなの、連れてくんなよ!」
居酒屋で、同僚が叫んだ。
「桜坂さんの友達だから、その、どうせ大したことない女の子が来ると思ってたから、俺、こんな普段着で、こんな安い店…」

同僚は、離婚して数年、切実に彼女を探していた。
彼女も、遠距離の彼氏と別れていたので、2人を会わせることにした。
事前に、彼女は可愛い人だよ、と話したら、
「女同士の『可愛い』はあてにならないんだよな!」と一蹴された。

「まさか、桜坂さんの友達に、あんな美人がいるなんて…」

同僚は、それまでに見せたことのない狼狽えぶりだった。

「お待たせ」
彼女が帰ってきてから、同僚はずっと上機嫌だった。

彼女は、私に釣り合わない。
私と彼女は、友達同士に見えない。

私が蔑んで見られるのは、昔からだ。今に始まったことではない。
こんな綺麗な友達、今までいたことがない。

彼女は、クラスに一人いるかいないかの、高嶺の花という感じ。

私は彼女とは違うんだ。
同僚の反応は、一般的にみんながするであろう反応なんだ。
と言い聞かせていた。

「しいちゃんの同僚の方、明るくて話しやすくて、いい人だね。うん。」
二人きりになった時、彼女はありきたりな感想を言った。

後日、同僚は彼女を映画に誘い、帰り際に告白したが、振られた。

二人から、こんなメールがきた。

「ちょっと告白が早すぎというか…。私、彼のこと全然知らないんだよね。」

「俺、振られちゃった。彼女をどうしても手に入れたくて、焦って告白してしまった。結果はこうなったけど、桜坂さん、会わせてくれてありがとな!」
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