腹黒王太子の華麗なる策略
「やっぱりお前、聖獣だったんだな、モコ」

クリスが話しかけると、モコは彼と目を合わせ頷く。

……彼は、モコが聖獣って知っていた?

でも……聖獣って一体何?

「今治してやる」

優しく声をかけてクリスは、何か念じるように目を閉じた。

すると、ズボッとモコに刺さっていた長剣が抜け、モコの傷が瞬く間に癒えていく。

「……魔法が使えるの?」

私が驚きの声を上げれば、クリスは目を開け、「まあね」と認めた。

赤ん坊の頃から一緒にいるのに、やっぱり私は何も彼のことを知らなかったんだ。

ひとり沈んでいたら、怪我が治って元気になったモコがペロッと私の頰を舐めた。

ハッと我に帰ると、モコと目が合って、モコの目はいつもの可愛い目でもう大丈夫だと告げていた。

でも、何か感じたのか、モコはすぐに険しい顔になり、毛を逆立てる。
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