腹黒王太子の華麗なる策略
「さすがアン。察しがいいね」

ニッコリ笑ってクリスは私を褒める。

「じゃあ……結婚の話は?」

「あれはフィオナとシャメル国王が仕掛けた罠だ。花嫁としてやって来た王女は、宴の席で赤毛のカツラを外して俺に襲いかかってきた。すぐに捕らえたが」

クリスの説明に私は絶句した。

花嫁も偽物だった。

……じゃあ、私は何のために城を出たのだろう。

結局、クリスは結婚しないってことだよね?

でも……それは時間の問題じゃない?

今回は結婚しなかったけど……いずれ彼はよその国の王女と結婚する。

「アン、大丈夫か?」

黙り込む私を心配してクリスは顔を覗き込む。

「……うん」

笑顔を作ろうと思っても心身ともに疲弊していてうまくいかなかった。

今日自分の身の周りで起こったこと全てが信じられない。
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