腹黒王太子の華麗なる策略
モコを胸に抱いてこれからどうしようかと思案していたら、クリスに突然抱き上げられた。

「わっ!クリス、いきなり何するの!」

驚いた私は、クリスに抗議した。

「雨でずぶ濡れだから、風呂で温まらないと風邪を引く」

『風呂』と聞いて、先日のクリスとのキスを思い出す。

また、あんなことされたら、拒む自信がない。

「……そ、それなら、先にクリスが浴場に行って。私は着替えを用意するから」

適当な言い訳をしてクリスから逃げようとしたが、彼は騙されてはくれなかった。

「そんなこと言って、逃げるつもりだろう?着替えなら、俺のがここに余分にある。アンもそれを着ればいい」

クリスは棚の前に行くと、目で私に着替えを持つように促した。

……逃げられない。

仕方なく着替えを手に持ち、クリスに抱き上げられたまま浴場に行く。
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