ミンジュンが私を溺愛すぎる件
詠美は涙が出そうだった。
本当はミンジュンにそうしてほしいと思っていた。
でも、表舞台から消えたミンジュンの理由を知った今、そんな事は絶対に頼めないし、きっと美沙おばちゃんのようなミーハーを毛嫌いすると思っていた。
「ありがとう…
美沙おばちゃん、すごく喜ぶよ…
ミンジュンさんが、そんな風に考えてくれて、本当に嬉しい…」
詠美は堪えきれずに涙をこぼした。
だって、やっぱり美沙おばちゃんは私にとってはお母さんで、いつも楽しく笑顔でいてくれたおばちゃんに何かお返しがしたかった。
「当たり前だろ…
詠美の大切な人は俺にとっても大切な人で、それに、美沙おばちゃんがいてくれて、俺は今、内心ホッとしたんだ。
お母さんがいなくても、詠美の事をちゃんと見て想ってくれる美沙おばちゃんがいた…
それだけで詠美は可哀想な女の子じゃない。
それに俺へと導く天使みたいじゃないか。
美沙おばちゃんがいなかったら、俺達はこうやって出会ってないわけだろ?」
天使というところで、詠美は泣きながら笑ってしまった。
見た目は天使というより、仏様に近いから。
「あと、詠美が良ければだけど、俺の事はちゃんと紹介してほしい」
「恋人としてということ…?」
ミンジュンはニコリと笑って頷いた。
詠美も涙が残った瞳で静かに頷く。
きっと、お父さんも美沙おばちゃんもお兄ちゃんも職人さんも、誰もこんな展開を予想すらしていない。
明日、どうやって伝えよう…
ううん、それより、今はミンジュンさんに、私の生まれ育った街と大好きな家族を見せてあげたい。
下町育ちの私の家族は、きっと喜んでミンジュンさんを受け入れてくれるはずだから。