ミンジュンが私を溺愛すぎる件



翌日、詠美は二か月ぶりに我が家へ帰った。
その間、何度か電話しては父親に声は聞かせていた。
でも、久しぶりに私の顔を見た父さんは、ホッとしたような怒っているような複雑な笑みを浮かべ、私を迎え入れてくれた。


「今日は大切な話があって帰って来たの」


「大切な話?」


営業が終わった店の中を片付けながら、詠美は美沙おばちゃんにそう伝えた。


「だから、お父さんにも職人さんにも、居間の方に来てもらいたいんだ。
今日、お兄ちゃんは?」


美沙おばちゃんは不思議そうな顔をして詠美を見ている。


「遼太郎は、昨日から長期の出張に出かけちゃったよ。
帰って来るのは一か月後になるって」


「そっか…
じゃ、お兄ちゃんはいいや」


詠美は内心ホッとした。
この家で一番冷静で勘が働くのが兄の遼太郎だ。
兄がいないのならば、単純でちゃきちゃきな父さんやおばちゃんや職人さんは詠美にとってはお手の物だ。

詠美は煎餅焼きの仕事場に皆を呼びに行った。
ミンジュンがオリエンタルイースト東京の中に入っているフレンチレストランのシェフに頼んで、スィーツを作ってもらっていた。
詠美は小さな居間のテーブルにそのケーキを並べ、皆を待った。



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