ミンジュンが私を溺愛すぎる件



「洗面所から出て来ないんだ。
ミンジュンさんは父さんが煎餅の仕事場とかを案内するから、詠美、美沙の事は頼んだぞ」


詠美は美沙おばちゃんの性格はよく知っている。
普段は大らかでどんと構えているように見えるけれど、内心は小心者で気が小さい。


「美沙おばちゃん、詠美だけど、入るよ」


詠美はそう言うと洗面所に入った。
すると、美沙おばちゃんは一生懸命お化粧を直している。
詠美は後ろから美沙が映っている鏡を覗きこんだ。


「ばっちり綺麗、だから、早く行くよ。
そうじゃなきゃ、ミンジュンさん、帰っちゃうよ…」


詠美がそう急かすと、美沙おばちゃんはせっかく綺麗に化粧をしたのにポロポロと涙をこぼし始めた。


「詠美…
私だけミンジュンに会っていいのかしら…?

ミンジュンファンは、ミンジュンが突然テレビに出なくなって、その悲しみを乗り越えて、でも今でも健気に応援して復帰を待ってるのに…」


詠美おばちゃんは鼻をすすりながらそう訴えた。


「じゃあ、美沙おばちゃんが、それをミンジュンさんに伝えればいいよ…
日本のたくさんのファンは、まだあなたを愛して応援してますって」


詠美のその言葉に救われたように、美沙は小さく頷いた。
そして、詠美に手を引かれながら店の中へ入って行く。



< 152 / 212 >

この作品をシェア

pagetop