ミンジュンが私を溺愛すぎる件
それには綺麗な日本語で、東京の土地名や施設が箇条書きしてある。
詠美はその中でも一番大きく書かれている文字に、気持ちが凹んでしまった。
「浅草」と大きく書かれた文字の下には丁寧に線まで引いてあり、その横にはハングル文字で何か殴り書きしている。
ハングルが読める詠美はすぐに理解してしまった。
韓国人の男と日本人の女が運命的な出会いをする…
ということは、こてこての恋愛映画…?
すると、詠美は自分が浅草出身だという事実を隠そうととっさに思った。
何でだかは分からないが、本能がそうしろと告げていたから。
詠美はミンジュンが手配した超高級車のベンツの中で、そっと胸を撫で下ろした。
詠美がお泊り用の荷物を取りに行くにあたりミンジュンも一緒に行くと言い出したため、詠美は一瞬パニックになった。
ミンジュンの事だから、一緒に付いて行くという事は家まで入るという事だ。
韓国の人達は、日本人より人懐っこいところがある。
日本人は他人に対してすぐに壁を作りたがるが、韓国の人達はフランクですぐに仲良しになれる。
いや、でも…
うちのお父さんは、美沙おばちゃんが熱狂的なミンジュンファンだった事もあって、ミンジュンの顔は絶対に覚えているし、うちで働く職人さんでスピーカー並みに口の軽い人もいて、もしミンジュンを連れてお店に帰ったら、浅草中にミンジュンご訪問の事実が知れ渡ってしまう。
ミンジュンがお店に来た時のパニックを考えると、詠美はゾッと背筋が凍った。