ミンジュンが私を溺愛すぎる件
詠美が店に入ると、美沙おばちゃんが接客をしていた。
「美沙おばちゃん、手伝いに来てくれたんだ。
ありがとうね…」
詠美は、内心、心臓が破裂しそうだった。
美沙おばちゃんの韓流に関わる全ての物への嗅覚はすご過ぎるから。
「あ、その、お父さんから私の事情は聞いてるよね?
通訳の仕事がかなりハードみたいで、私も三か月間はホテルに缶詰にならなきゃならないの。
だから、今、荷物を取りに来て、またすぐに出るから。
美沙おばちゃんも無理しないでね。
お父さんにもそう伝えといて。
何かあったら携帯に電話してって。
でも、たまには顔出しに帰ってくるから」
詠美は機関銃トークでそう言って、美沙の話す隙を与えなかった。
そして、美沙の顔も見ずに二階の自分の部屋に行こうとすると、母親代わりの美沙の甲高い声が詠美を呼び止めた。
「ねえ、その韓国人のクライアントってどういう人なの?」
詠美は後ろを向いたまま小さく息を吸って、美沙の方へ振り返る。
「韓国の実業家で50代のおばさん。
日本語は全く話せないから、私がずっと必要なんだって。
ちょっと厳しそうだけど、いい人だよ。
だから、心配しないで」
詠美はそう言うと、急いで二階へ上がった。