ミンジュンが私を溺愛すぎる件



二人はカフェを出て早歩きでホテルへ向かった。
目の前にそびえ立つ超豪華ホテル“オリエンタルイースト東京”は、今では詠美の仮の住まいとなっている。
そんな現状が今でも信じられないが、でも、きっと、夢のような事が起こる時には何かを犠牲にしなければならないのかもしれない。

それは私の自由だ…
ミンジュンさんと過ごす間、きっと私に自由は訪れない。


ミンジュンの部屋の前に辿り着いた二人は、一回呼吸を整えた。
そして、詠美は豪華な呼び鈴を鳴らす。

すると、いつも通りに自動で鍵が開いた。
詠美が一歩を出せずに躊躇していると、テヒョンが先に入ってくれた。


「ミンジュン兄さん、居ますか?
テヒョンです」


詠美も恐る恐るテヒョンの後から玄関に足を入れる。

テヒョンの呼びかけに返事はないが、明らかに誰かが廊下を歩いて来る音がする。
テヒョンは詠美の顔を見た。
大丈夫だからという様な笑みを浮かべて。


「何しにきた?」


ミンジュンは、詠美の顔も見ずにいきなり韓国語でそうテヒョンに問いかけた。
日本語を話す時より確実に声が低く、言葉の切れ端が鋭利な刃物のように尖っている。


「ミンジュン兄さん、詠美から聞いたと思うけど、実は詠美に日本語を教わってるんだ。
それを、ちゃんとミンジュン兄さんに伝えようと思って」


< 63 / 212 >

この作品をシェア

pagetop